INSPiとの出会いで外交にハモりを!?“ハーモニー大使”誕生秘話(堀江大使ご夫妻との鼎談part1)

駐ケニア日本国特命全権大使 堀江良一さん、裕子さんご夫妻

堀江夫妻ミクロネシア

ミクロネシア連邦で大使を務められていた2018年9月、日本との国交30周年の記念行事を行う際にINSPiにミクロネシアでのコンサート、ワークショップを依頼。2019年7月にケニア共和国に転勤。41年間外務省に勤められ(2020年1月現在)在外勤務は現在のケニアで10カ所目。イギリス、ナイジェリア、国連代表部、ニューヨーク総領事館、カナダ、ドイツ、インド、スーダン、ミクロネシア、ケニア。(在ケニア日本国大使館は、エリトリア、セイシェル、ソマリアを兼轄)

INSPi(インスピ)

INSPi6人

hamo-labo代表、杉田 篤史が所属するアカペラグループ。メンバーは6人。2001年にメジャーデビューし、“アカペラ”=声だけのハーモニーを使った演奏を行う。国内外でコンサート、ワークショップ多数開催。2018年9月5日~9月11日にミクロネシアを訪れ、コンサート3回、ワークショップ5回を行った。

INSPiとの出会いで外交にハモりを!?
“ハーモニー大使”誕生秘話。

堀江大使ご夫妻はINSPiのハーモニーとの出会いを機に外交の場にハーモニーを取り入れているそうです。長年外交官、大使として、危険地域での任務も含め非常にデリケートでシビアな局面を多く経験してきた堀江大使が、自らハーモニーを届けるようになったそのきっかけからお話を伺います。

杉田(以下『杉』)「お2人でハーモニーを披露するという新しい扉を開かれたのはINSPiの何をみて感じられたんですか?」

堀江大使(以下『堀』)「まずハーモニーってすごいなぁと思って。楽器もなしに。たいしたマイクも音響もないし。あるものでやりますよって言ってくださって。感動しちゃって。ハーモニー、歌の力っていうのは驚異的。本当に驚きでしたね。」

奥様の裕子さん(以下『ゆ』)「ミクロネシアの皆さんも大喜びで。私たち夫婦にとって3年間のミクロネシアで一番楽しい一週間でした。」

堀「楽しかったですね~!本当に一番楽しかった!」

杉「全行程観にきてくださいましたね。」

ゆ「本当に評判が良くて。町中の人から「INSPi良かった」「また来て欲しい」って何度も何度も言われていたんです。ワークショップをした高校の子供たちも、INSPiが教えた「上を向いて歩こう」のアカペラバージョンを文化祭で再現して歌ってくれたり。まだ波動が残っていて今も歌い継がれていると思います。」

コンサート
ミクロネシアで行ったコンサートの様子。
コンサート1
ワークショップ参加者の皆さんと。
ワークショップC
ワークショップの様子。
ミクロネシアの町の人たち
ワークショップに参加する

堀「私も家内も昔から歌は好きで。下手だけどギターをちょっと演奏できるので、こんなにハーモニーがミクロネシアでうけるんだったら二人でもやってみようかと。
日本の援助で小学校の体育館を作り、その式典でスピーチすることになったんです。当時の大統領もいらして、子供たちは小学生がほとんど。」

ゆ「900人の子供たち。」

堀「スピーチよりも歌でも歌おうかと思って。それでINSPiのワークショップやコンサートで本当にたくさん歌ってもらった『Over the Rainbow』、これをまず二人でやってみようと。これがまた好評で。」

杉「素晴らしい!僕らにも大使公邸でのお食事会で披露していただきましたね。今まではプライベートでは歌われてたんですか?」

堀「全くの趣味だったので人前でやったことなかった。お食事にご招待した、あの時が人前では初めてです。勇気を出して3曲もプロの前で歌って、あれがデビューでしたね。
これまではカラオケで歌ったりちょっと2人で歌ったりでしたが、真剣にハーモニーをつけて歌うようになったのはINSPiが来てからです。人前で歌うとなるとやっぱり真剣に考えるようになって。」

杉「やはり準備や練習はされたりしているんですか?

堀「ほとんど毎日朝からやっています。継続して声を出してね。」

杉「じゃあ最近ではお二人のレパートリーは結構増えましたか?」

堀「はい、増えましたね。今では30曲くらいです。」

杉「ははは!すごい!!」

心の壁をとりのぞく“ハーモニー外交”。ブーイングのような雰囲気の会場もみんな入って大盛りあがり!

堀「7月にケニアに来てケニアでも何かやろうかと思って。英語の歌はAmazing Graceを歌ったり、スワヒリ語の歌も2つ覚えました。『ジャンボブアナ』っていう“ケニアにようこそ”という意味の、お客さんを歓迎する非常にノリの良い歌と、『マライカ』“天使”という意味のラブソング。民謡はやっぱり大変喜ばれますね。」

杉「さらにその国の言葉で歌ってくれるっていうのは嬉しいですよね。僕らも海外公演のたびに現地の言葉で歌うオリジナル曲『ココロの根っこ』があります。」

堀「ケニアは公用語がスワヒリ語と英語なんですけど、他に60以上の言語がある。地域によっては英語よりもスワヒリ語っていうところもあって。そうするとスワヒリ語の歌で歌うと本当に喜ばれるんです。」

堀「ケニア最大のサファリでヌーの大移動がある“マサイマラ”という自然豊かな地域があります。現地の小学校の校舎は泥の壁でボロボロになっており、トイレもなく、本当にそこらへんで男の子も女の子も用を足していた状況。そこで校舎、トイレをつくった。
その引き渡し式があってスピーチをしたんですけれど、『じゃあちょっと歌を歌います』と言って歌ってこれまた好評で。父兄のおばちゃんたちも一緒になって歌ってね。もう一回歌って、もう一回歌って!と。アンコール。」

ゆうこさん「もうみんな寄って来ちゃって。囲まれて。」

堀「それでマサイの長老が2人にお礼として称号を授与してくださいました。私が「メムシ」(幸運なる者)家内には「ナシパイ」(幸福)。そしてマサイの赤いマントをいただきました。」

子供たちに囲まれて歌う堀江夫妻
子供たちに囲まれて歌う堀江夫妻
マサイの赤いマントを贈られる堀江大使

堀「モンバサという港町があるんですがここは英語で喋ると不評を買う。スワヒリ語で喋らないとブーイングが出るようなところ。私も挨拶くらいはスワヒリ語で。
でもその後スワヒリ語で続かないわけですよ。スピーチしても反応が悪かったのでアカペラで2人でハモってですね。そこでも大統領や現地の人に喜んでいただいて。
例えば大きな会合などで、たまにはスピーチでなく、あるいはスピーチに加えて歌を歌うと全く雰囲気が変わります。」

ゆ「もうガラッと変わりますね」

杉「それは肌で感じられるんですね」

「歌い出しのワンフレーズだけで今までブーイングのような雰囲気だった会場が変わります。
式典などのイベントではプロのピアニストや歌手の演奏会とかそういったものがあるんですけれども、下手なりにも大使夫婦でギターを弾き、ハーモニーを奏でるというのは」

ゆ「多分他にあまりいない」

堀「私ももうすぐ外務省に入って41年になりますけど聞いたことはない。これは希少価値があるかも(笑)」

杉「ご夫婦でっていうのが印象に残りますよね。また、みんな入って一緒に盛り上がれる雰囲気がある。楽しそうにハモっていると聴いている人たちも入っていってハモったり。より共有できるというか。」

堀「そうですね。」

ゆ「ケニアも100カ国ぐらいの大使ご夫妻がいらっしゃいますので、大統領も顔を覚えるのは難しいとは思いますけれど、“日本大使は歌を歌ってくれた”というので。」

堀「覚えられています。」

ゆ「会うともうハグしてくれます。大統領が皆さんとご挨拶で握手をされますが、主人のところだけハグです(笑)。写真も撮っていただいたり。本来写真撮影禁止なんですけど(笑)」

堀「大統領がいらっしゃるところは警備が厳しくて。」

ゆ「5000万人のリーダーですからね。」

堀江夫妻ケニアにて
ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領。
日本文化祭にてアミナ文化スポーツ大臣と。

最初であり、また最終的に「人間関係」。

杉「ハーモニーを使っての外交を進められていて『ハーモニーの力ってすごいなと感じた』とLINEでも書いていらっしゃいました。ハーモニーがあることによってどう違いますか?それがない外交と。」

堀「外交の目的って何なのか、いろんな捉え方があると思うんですけど。
国益の維持であり増進であり追求だと思っているんです。ケニアならケニアにいる日本人、日本の企業、生命財産を守る。また、日本にいる人たちにとってより良い世界になるようにより良い外国との関係が築けるようにするのが外交の目的。

ケニアは約700人の日本人がいて日本企業は約70社ある。その方達がより活動しやすいように。またテロや犯罪に直面する危険をどれだけ低くできるのか。何か問題が起きた時にどうやって解決に向かうのかというのが外交というものだと思うんです。

外交活動の中でいろんな要素、例えば援助、交流、企業活動、貿易などありますが、やっぱり最初であり、また最終的に「人間関係」だと思っています。

例えば大統領というのは大使館のスタッフの中で言えば大使しか会えない。一国の指導者とどういう関係を結べるか、というのは大使としての重要な肝の部分なんですよね。官邸に行っていろんな問題を解決するために大統領とお話をするんですけど、初対面、あるいは何度目かの関係の時に『あ、そう言えばこの間歌を歌ってくれたね。今度は何歌うの?』とかね。そういう話ができると、人間関係全然違ってくるんですよ。

堀江大使

やっぱり人間誰しも初めて会えば警戒感を持っている。“どんな人だろう”と。歌を歌えば仕事が片付くわけでも問題が解決するわけでもないんですけれど、関係を良くするため問題を解決するために人間関係が重要だと。一番大事な要素のところに音楽というものの役割が大きいと感じます。」

相手のパートも自分が歌っているように。ハーモニーを考えることはコミュニケーションを考えること。

杉「いつもLINEで動画を送ってくださっていますが、改めて、お2人のハモりが素晴らしいんですよ。ハーモニーって音程をきっちりとったらそれでいいのかって言うとそこだけじゃない。音程が合っていることは条件の一つなんですけれども、さらにお互いの意識が同じところに向いているか、一つになろうとしているか。だから上手いソロ歌手が集まってハモっても音は合っているけどなんか気持ちよくないっていうこともある。」

「何度も練習して、一人で歌っていると聞こえてくる気がするんですよ。なんかね、家内の声が。」

杉「素晴らしい!」

堀「『今歌ってた?』って聞いたら『いや歌ってない』って(笑)」

杉「ハーモニーをする人の理想の形ですね!僕らでも時々あるんですよ、INSPi6人の声がまるで全部自分から出ている感覚になることが。それぞれ別の個人ではなくて、あたかも一つの生命体になったような。お互いの間がなくなる感じ。それと近いのかなぁと思いますね。」

堀「夫婦の仲が悪いとそうはならない。」

杉「ちょっと喧嘩した後だとハモらない(笑)。音合わせと打ち合わせを両方するスケジュールだったら、先に音合わせをやったり。そこでうまくハモれるとその後の打ち合わせも」

堀「うまくいくと。なるほどね。」

「ハモろうとする行為が一つになろうとする行為。その後に言葉を使ったコミュニケーションをする場合でもうまくいく。それは自分が“ハモニケーション”ということでいろんな人に伝えようと思ったきっかけですね。やっぱりハーモニーってそういう力がある。

『うまくハモるにはどうしたらいいですか』と聞かれたらいつも言うのが『相手のパートも自分が歌っているようにやってみてください』と伝えるんです。今、堀江さんがおっしゃった『聞こえてくる』というのはもうそれを実践されているんだろうなぁと思いました。」

堀江夫妻

ゆ「人生の出会いは素晴らしいですね。ミクロネシアにお越しいただいて私たちの人生がらっと変わりましたから。ありがとうございます。」

堀「そうですね。INSPiと出会わなければ人前で2人でハモるなんてことしてなかったでしょう。」

ゆ「それが喜ばれて。本当に喜びのタネを撒かれていますね。これからもますます頑張ってください。」

杉「経験豊富なお二人から太鼓判をいただけるとこれからの自信になりますね。ありがとうございます。」

鼎談

話せば話すほど「外交」と「ハーモニー」には共通点があるようで…
外交は国と国とのハーモニーづくりとも言えるからかもしれないですね。
次のページではミクロネシアとケニア、それぞれの国についてのお話を交えながら
人と人との豊かなハーモニーを育むにはどうすればよいのか、若い人たちへのメッセージもお伺いしたのでぜひご一読ください!

取材場所:TOKYO L.O.C.A.L BASE