完成&公開!「野村人煦(のむらじんく)~立ち合い・サシアイ・支え合い~」

愛媛県西予市野村町の“大人たち”と新曲「野村人煦(のむらじんく)~立ち合い・サシアイ・支え合い~」を制作、2021年5月12日にミュージックビデオを公開しました!

【画像】hamo-labo YouTubeチャンネルより

西日本豪雨から3年近くが経とうとしています。明るく支え合い困難を乗り越えてきた野村。これまでに子どもたちとつくった歌「のむらのうた」「のむらからの手紙」では、困難の中でも工夫し前向きにがんばる姿、そして人々への思いやりが込められた歌詞に勇気づけられました。今度は野村の“大人たち”が「大人も負けていられない!」と歌づくりに挑戦。

お酒のサシアイ文化、伝統の相撲文化、助け合いへの感謝など野村らしさを盛り込んだオリジナルソングが完成しました。

制作はhamo-labo杉田(神奈川県逗子)と皆さん(愛媛県野村)とでオンライン会議を重ね作詞、レコーディングはリモート指揮、機材は地元の皆さんのご協力を得ながら。 映像も野村の方たちがいろいろなシーンの写真・動画素材を集めてくださり(杉田が一緒に“サシアイ”しているときの写真もあります)。離れた場所でも創意工夫で一緒に作品づくりができました。

町の暖かい雰囲気と野村愛がたくさん詰まった作品になりましたので、ぜひ多くの方にご覧いただければ嬉しいです!


▼新曲「野村人煦(のむらじんく)~立ち合い・サシアイ・支え合い~」YouTube


「野村人煦」を広くご紹介するにあたり、
本プロジェクトを中心となって進めてくださった高岡 伸次さん、
被災した野村唯一の酒蔵、緒方酒造の銘酒「緒方洪庵」の復活にご尽力されている松永准教授よりコメントをいただきましたのでご紹介いたします。

◉野村地域自治振興協議会 本事業担当:高岡 伸次(たかおか しんじ)さんより 
「平成30年7月豪雨災害から3年が経とうとしています。当時、地域の方々は大きな困難に直面していましたが、それを乗り越えてここまで歩めたのは、人と人が寄り添い、支え合ってきたからだと強く感じております。
そこには被災された方だけでなく、ボランティアの方、地域内外の方など多くのつながりがありました。そしてなにより子どもたちの前向きな気持ち・元気と、その子どもたちが作った『のむらのうた』 が多くの方に勇気を与えてくれたのです。
そして災害から2年が経とうとしていた頃、今度はコロナウイルスが猛威を振るいます。田舎の野村でも活動は自粛されましたが、ここでも子どもたちが『のむらからの手紙』をつくり、地域内外を応援してくれました。 大人たちも自粛だけではいけない。1人ではなく、みんなが集まれば何かができるのではないか。ここでも野村らしさが地域を盛り上げました。野村と言えば相撲とお酒、子どもたちに負けない元気なうたを作ろう!少しぞえた(ふざけた)うたに!大人も元気が一番やけんな!野村愛を受け継いだこの『野村人煦』ぜひご視聴ください。」

◉大阪大学適塾記念センター准教授 松永 和浩(まつなが かずひろ)さんより 
「『飲む村、野村』にふさわしい歌が完成しました。野村は幕末の嘉永5年(1852)に大火に遭い、復興を願って乙亥(おとい)相撲が創始されました。以来、野村では相撲が盛んで、子どもたちは身体をぶつけ合って友情を育みます。『飲む村、野村』の大人たちは事あるごとに飲み会を開き、サシアって親交を深めます。2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けましたが、酒で培ったつながりから励まし合い、支え合い、酒が復興の原動力の一つとなっています。
野村唯一の酒蔵だった緒方酒造の銘酒『緒方洪庵』も最近、われわれ『緒方らぼ』によって復活しました。NEO『緒方洪庵』を飲みながら『野村人煦』を聞いて歌って、野村を応援してください。『野村人煦』がNEO『緒方洪庵』とともに、乙亥相撲のように末永く愛されることを祈念しています。」
※プロフィール:大阪大学適塾記念センター准教授。博士(文学)。専門は日本中世史、酒史学。著書に『ものづくり上方“酒”ばなし』など。NHK連続テレビ小説「マッサン」では洋酒関係資料提供を務める。 

◉INSPi / hamo-labo代表 杉田 篤史(すぎた あつし)
「3年前の西日本豪雨災害がきっかけでご縁がうまれ通うようになった野村。地域の皆さんの明るい笑顔と子ども達のイキイキとした様子が印象に残る町です。野村の皆さんの地域を愛する熱い気持ちは、文化を大事にしてきた先人の想いを受け継いだ歴史の積み重ねだと感じます。そんな野村からこの歌を通じて 全国の町々に、コロナ禍をしなやかにノリ越えるようなエールを贈ることができたらと思います。」

歌詞 よもやまばなし

タイトル「野村人煦(のむらじんく)について

相撲巡業などで歌われる民謡の一種で「相撲甚句(すもうじんく)」というものがあります。今回は相撲をテーマにした歌ということで、相撲甚句のような短調の節回しや合いの手をイメージして作曲していきました。タイトルも「のむらじんく」と提案したところ野村の皆さんからのアイデアで「あたためる・めぐむ・ひかり・日の光」などの意を持つ「煦」という字をあてることにしました。人が人をあたため照らす野村の人々の様子にぴったり合うタイトルになったと思います。

マワシかいたか

=マワシ締めたか

慰労会

稽古が終わると、地域の役員さんが料理を用意し、慰労会が始まります。慰労会では、当たり前のようにサシアイが始まります。力自慢が集まっているので、少々けんかになったり、腕相撲勝負になったりすることもしばしば。腕相撲勝負では、力が拮抗していたときに机が悲鳴を上げ、まっぷたつに折れたこともあるとか。

馬力

馬力=お酒

「やんよー やんよー」

小さい選手が大きい選手に勝つと「やんよー」という歓声が客席から上がります。「やんよ」とはばんざい、よくやったという意味です。

土佐鶴(とさづる)

日本酒では「土佐鶴」がサシアイの場でよく飲まれているそうです。器はもちろんコップです。(お猪口だと小さ過ぎるとのこと)土佐鶴酒造は高知県東部の安芸郡安田町にあり1773年創業の歴史ある蔵元。この度の楽曲制作にあたり「土佐鶴」の名前の使用を快諾してくださいました。

サシアイ

宴を共にする人たちと一つの杯で飲み合う返杯文化。飲める人はビールや日本酒(!?)を、飲めない人はお茶やソフトドリンクを、手にしたコップに注いでもらい、飲み干したらそのコップを相手に差し出し返杯。「サシテ、ササレテ、またサシカエシテ」でコミュニケーションを深めます。サシアイには相手への敬意や歓待、慰労などの意味がこめられています。 

桑の木

野村では昔から養蚕が盛んで、「ミルクとシルクの町」とも呼ばれるほど。(ミルク:酪農も盛ん)蚕の餌となる桑の木がたくさん植えられています。“大人たち”が子どもだったころの「真冬の寒稽古」が強烈な思い出という方が少なくないようです。土俵の周りに竹の骨組み、藁を貼り付けて防寒対策を行い、桑の木の太くなった木を薪にして焚火をしながら年中相撲を取っていました。上着に下はマワシ姿、そして裸足で雪が積もった道路を泣きながら走っていたそうです。

胸を貸してくれた

胸を貸す=相撲の稽古相手になる。

立ち合い

両力士が手をついた姿勢から立ち上がって取組を開始する瞬間のこと。力士同士が呼吸をあわせて「立ち合う」のが語源。

石ヶ嶽(いしがたけ)

地域で一番強い力士に贈られていた四股名「石ヶ嶽」。最後の伝承者である井関英勝さんが2015年2月に亡くなられたあと、まだ引き継ぐ人は出ていないそうです。ちなみに井関さんはお酒の強さも横綱級で
〇消防団のヘルメットに氷とウイスキーを一本分入れて飲み干して、これでさしてこい、と言っていた。
〇一番飲んだのは、3人で日本酒1斗(1升瓶10本)くらい。
〇晩年は酒が弱くなったため、晩酌で日本酒1升しか飲まなかった。
といった豪快な人でした。

権現様(ごんげんさま)

野村町で唯一の相撲道場「阿部道場」があったのが権現様と呼ばれる場所でした(当時熊野神社があったことから権現様と呼ばれる。)県内でもトップクラスの強い道場で、その分、練習もピカイチに厳しかったそうです。

もう一丁、かまそうかい

青年の稽古で、徐々に熱を帯びていく申し合い(試合)では、負けた選手に再戦の挑戦権があり、「もう一丁」というと勝った相手は再戦を受けるかどうか選ぶことが出来ます。互いの力が拮抗していればしているほど、どちらも負けたままで土俵を降りたくないため、数十番対戦が続くこともあるとか。

かあちゃん金星

相撲用語で、平幕力士が横綱に勝つことを金星といいます。派生して、美しい女性をお嫁さんにすることを「金星をとった」というようになり、金星=美人という意味として使われるようになったようです。今回の歌詞では「酔うと奥さんが美人に見える」という意味と「奥さんが飲んで酔っ払うと横綱にも勝つくらい強くなる」という二つの意味が込められています。

雨がパラパラ 女神(かみ)さん  の恵みよ

都市伝説ですが、乙亥大相撲の日には雨が降るといわれているそうです。これは、無火災祈願で始まった乙亥大相撲なので、火事にならないよう神様が水をかけてくれているということだそうです。さらに乙亥大相撲が奉納される愛宕(あたご)神社は、女神・伊邪那美命(いざなみのみこと)がまつられていること、また男が相撲に興じていられるのも、支えてくれているカミさん(奥さん)のおかげという意味などを込めた歌詞になっています。

アサヒ

「のむらのうた」の歌詞「緑あふれる山に朝霧がかかって朝日が差してくる」を聴いた野村の大人たちは、みなさん「朝日」と「アサヒ(ビール)」がかかっていると思われたそうです。杉田は全くそのつもりはなく偶然だったのですが、野村でサシアイといえばアサヒスーパードライの大瓶が定番とのこと。その理由は「飲みやすい、喉越しがいい、お腹にたまらない」ということでサシアイやすいからだそうです。

歌詞「野村人煦(のむらじんく)
~立ち合い・サシアイ・支え合い~」

うた:野村の大人たち
フラメンコギター、プログラミング:東川翼
長胴太鼓、チャッパ:葛西啓之(和太鼓グループ彩-sai-)
締め太鼓、篠笛:齋英俊(和太鼓グループ彩-sai-)
鉦鼓:酒井智彬(和太鼓グループ彩-sai-)
録音、ミックス:東川翼

「のむらのうた」「のむらからの手紙」

これまでにhamo-labo HPでもご紹介している通り、野村の子どもたちと「のむらのうた(2018年)」「のむらからの手紙(2020年)」を制作しており、「野村人煦」は野村町の皆さんと一緒につくった歌として第3弾となります。これまでのあゆみについてはぜひこちらをご覧ください。

▼【「のむらのうた」「のむらからの手紙」紹介ページ】へのリンク

本件への取材、また楽曲の音源データや映像データをご希望の方はこちらまでご連絡ください。 info@hamo-labo.co.jp
企画・制作:野村地域自治振興協会 株式会社hamo-labo