校歌をつくっています


校歌をつくっています。
神奈川県逗子市には2つの県立高校があります。
逗子高校と逗葉高校。
この2校が来年2023年4月に再編統合され新しく「逗子葉山高校」が設立されます。
そこで校歌も新たに制作されることになり、
hamo-labo代表 杉田が両校の在校生と共に新校校歌制作ワークショップを進めています。

◉なぜ杉田が校歌制作に関わることに?

杉田が東京世田谷から神奈川逗子に引っ越してもうすぐ5年。
移住のきっかけは2017年夏頃に一般の方に向けて初めてアカペラ体験ワークショップを渋谷で開催したとき、
葉山在住の建築家 下平万里夫さんが参加してくれて
「逗子とか葉山にはハモったりするのが好きな人いっぱいいるよ。逗子でこういうのやろうよ。」
と誘われ逗子駅前のワインバー「美ワイン処R」さんで毎月ワークショップをやるようになったこと。
通っているうちに逗子の環境や人々から感じる居心地のよさに惹かれ移住しました。

※「美ワイン処R」さんはコロナ禍で閉店。お店の歌をオーナーご夫婦に贈りました。

※ 下平万里夫さんが設計デザインした「運べる建築 ZERO POD」 は
2021年度の日本空間デザイン賞でシルバープライズを受賞。凄い人です。あと歌もつくる人です。

コロナ禍になるまで2年ほど、毎月ハモりワークショップを続けて、
その中でたくさんの地域の方々と知り合うことができました。
どんどん逗子に仲間が増えていきました。

美ワイン処Rさんでソロ弾き語りライブをやったり、
逗子文化プラザさんで友人のタップダンサーHAMACHIとコラボライブ「TAP×SING」をやったり、

地元のFM局「湘南ビーチFM」の看板パーソナリティ森川いつみさん(https://www.beachfm.co.jp/stafflist/520/)と手話シンガー青柳三保子さん(https://www.facebook.com/mihoko.aoyagi)と
逗子葉山の魅力を発信するイベントライブ「逗葉でごきげんよう」を立ち上げたり、

逗子生まれの若手凄腕フラメンコギター奏者東川翼さん(https://tsubasa-higashikawa.com)や
逗子で定期的に演奏活動されている和太鼓奏者葛西啓之さん(https://tsubasa-higashikawa.com)との出会いから
和太鼓×フラメンコという異色の地域愛ソング「野村人煦(のむらじんく)~立ち合い・サシアイ・支え合い~」も誕生しました。

逗子地域で音楽活動を展開していく中、お声がかかって
2020年に逗子高校で校歌をアカペラで歌うワークショップを担当。
2021年には逗葉高校で歌作りワークショップを担当してオリジナルソング「コンペイトウ」を制作しました。

こうした経緯で逗子葉山地域のみなさんや、
逗子高校、逗葉高校とのご縁が繋がっていき、
この度の新校「逗子葉山高校」校歌制作ワークショップをご依頼いただきました。

◉どのように制作している?

新校校歌制作ワークショップは今年2022年7月から12月の半年をかけて、
毎回1時間のワークを月に1〜2回のペースで全9回重ねていくスケジュールです。

まず最初にオンラインで歌作りの簡単な説明をして、
両校在校生全員から、学校生活の思い出や、逗子葉山の好きな景色などを訊くアンケートをとりました。
両校合わせて500人くらいのアンケートをみていると、
みなさんが校歌に入れたいワードが自ずと浮かび上がってきます。

2回目のワークショップからは特に校歌制作に意欲のある有志生徒のみなさんを中心に進めています。
ここまで3回対面でワークショップをやってきましたが、
場の変化の過程が明らかに現れてオモシロいです。

初回は生徒さんも先生方も杉田も三者様子を伺うような距離感で静かな場でした。
2回目は隣の友だちと少し雑談も出るくらいにほぐれてきました。
そして3回目はあえて座る席をシャッフルしたんですが、
おそらく普段あまり話してなさそうな生徒さん同士でも、和気あいあいと楽しげに話されていました。

ちなみに会場のレイアウトも

【初回:通常の教室のまま、杉田は教壇で生徒は机と椅子】
→【2回目:生徒も杉田も円状に座るが各自の前には机がある。先生は離れて観ている】
→【3回目:生徒も杉田も先生も全員円になって座り、椅子のみで机は無し】

という感じで少しずつ互いの心理的距離感と身体的距離感が近づくようになっていきました。

◉どんな校歌をつくろうとしている?

大きなテーマを「100年の後輩へ」としました。
逗葉高校は1978年設立で創立44年。(余談ですが杉田と同い年です)
そして逗子高校は1922年設立、なんと今年で創立100周年です。

学校は100年続くこともある。
新しく作る校歌も100年後の後輩たちが歌ってくれている可能性は大いにあります。

100年という時の長さ。
今から100年前の1922年は大正11年。
第一次世界大戦(1914-1918)の特需景気、
その中で大正デモクラシーやモダンガールといった民主化や自由な風が吹くものの、
1920年代は反動で不況に陥り関東大震災(1923年)などの大災害もあり
日中戦争(1937-)、第二次世界大戦(1941-1945)といった戦争の災厄へと向かう時代。
漫画「鬼滅の刃」が大正時代の設定ですね。
そんな頃から100年たてばスマホでリモートで仕事ができる時代になる。

100年という時間の流れは世界を一変してしまう。
今とは日常の風景もすっかり変わってるであろう、
100年後の「逗子葉山高校」に通う後輩に、
あなたならどんなメッセージを贈りますか?

生徒のみなさんは精一杯の想像力で未来の後輩に向けて手紙を書いてくれています。


◉みんなでつくるということ

現在およそ10名の有志生徒さんが中心となって歌をつくっています。
こういうワークショップをやっているとよく
「みんなから出たアイデアを一曲にまとめるなんて難しくないですか?」ときかれます。

いえいえ!めっちゃくちゃオモロいですよ!

生徒の皆さんが自由に書いてきてくれた「100年後の後輩へのメッセージ」
それぞれ眺めていると必ず、誰のものにもどこかしらキラリと輝くフレーズがあります。
全員のそんな「キラリフレーズ」を一枚の紙に書き出し眺めて、
それぞれのパーツを組み合わせたり入れ替えたりしてパズルのように動かしていると、
ある時ピタッとハマってそこに突如奥行きのある詩の世界がグワンと出現するんです。
その瞬間の驚きとゾクゾクするような感覚はたまらないものがあります。
今回もそんな瞬間をすでに何度か体感しています。

先日のワークショップでみなさんのをまとめた1コーラス歌詞を読んでもらった時、
生徒さんから「自分たちから生まれた歌詞とは思えない(ほど凄い)」という感想がでました。
「みなさんは凄い。その凄さがこうしてこの世界に表出しちゃいましたね。」とお伝えしました。

人が人と、それぞれの持つ可能性を集め、共に創るという行為。
まさに命の誕生。
その瞬間に立ち会えるのは本当に幸せなことです。

◉校歌ができたら

一般の方に向けたお披露目の場として
12月17日(日)逗子文化プラザ さざなみホール「逗子潮風芸術祭2022」を予定しています。
このコンサートは杉田の所属するアカペラグループINSPi、和太鼓奏者 葛西啓之、フラメンコギター奏者 東川翼などが出演します。

新しい校歌を在校生のみなさんに舞台で歌っていただきます。
逗子高校と逗葉高校の校歌も何らかの形で歌おうと思っています。
つまり、幕を閉じる両校校歌と、幕を開く新校校歌を歌い継ぐ、
これまでのありがとうと、これからも地域の皆さんと共にという想い。
そんなメッセージを込めて新旧の校歌を披露する予定です。

両校の卒業生の方にとっては、母校の校歌がなくなるような気がして、寂しく感じられるかもしれません。
だから新校校歌は両校校歌のDNAを引き継ぐようなものになるよう、
両校の校歌のエッセンスを感じられるようなものにしたいと考えています。

校歌はつまり地域の歌です。
地域の歌は例えばそこで災害など苦難があったとき人々の支えとなるもの。
前回のブログでそんなことを書きました。

ぜひ地域の皆さん、逗子高校・逗葉高校の在校生ご家族、また卒業生のみなさん、
また地域の外の方ももちろんぜひ!
この新校校歌制作プロジェクトに興味を持ってくださる皆さん、逗子葉山が好きな皆さん、
多くの方々にご来場いただき、
新たな「校歌」が「地域」と出会う瞬間を見届けていただければと願っています。