外交とハーモニー。豊かなハーモニーを奏でるには。(堀江大使ご夫妻との鼎談part2)

>>part1「INSPiとの出会いで外交にハモりを!?ハーモニー大使誕生秘話」はこちら

ハーモニーを奏でるには自分と違う音を知る。

杉「今までのお二人の経験から若い世代に伝えたいことはありますか?」

堀「どの国に居てもやはり日本と文化は違う。歴史、伝統も違う、やっぱりその国によって本当に違うんですよ。日本の物差しだけでは測れない。

日本人としての物差しは無くしてはいけないものだし、それは基準に、PCで言えばハードウェアとしてある。そこにいろんな文化を知ることによっていわばアプリを載せてどうやって豊かな自分のハードウェアのもとにソフトを動かしていくかということが必要だと思うんです。日本人としての物差しは基準に置きながらも、違う物差しがあるということを柔軟な考え方、態度で理解をしていこうというのが必要なんです。どの国の人もそうだろうし、何歳になっても。もっともっと皆が外国に出る、あるいは外国に出なくても日本に居て違う文化を理解していこうとするその姿勢が大事なんだろうと思います。

途上国、アフリカが特にそうですけど、本当にエネルギーにあふれている。日本が学ぶところがたくさんある。例えばケニアはプラスティックバッグは法律で禁止されているんです。売っても持っててもいけない。
それから今やケニアの総発電量の4割は地熱発電。
ソーラー、風力発電を入れると再生可能エネルギーがケニアの総発電量の7割以上を占めている。
環境問題、エネルギー問題だけでもケニアに学ぶことはたくさんあります。
そして60以上の言葉があって違う伝統文化があっても、部族民族ごとに伝統的な社会のシステムを維持し、一つの国としてクーデターが一度もなくやっているという歴史もある。

ミクロネシアは母系社会で、結婚すると奥さんの家族のところに住み、地位や財産などお母さんの系列で継がれていく。ミクロネシアは31年間の日本統治時代があり、多くの日系ミクロネシア人が生まれた。1945年に終戦し日本人は国外退去になった。
日系ミクロネシア人の子供たちはどうなったか。ほとんどは現地に残ってお母さんの方の大家族のもとに引き取られ、大事に育てられた。そして地元社会に暖かく受け入れられ教育も受け差別なく就職した。ミクロネシアの2割が日系人で、初代大統領、第7代大統領は日系人なんです。
どうして日系ミクロネシア人が差別も受けずに教育を受けて就職して政治・経済の各分野で活躍できているかというと母系社会であることが大きい。子供が生まれたら父親が誰であれ母親の家族、あるいは親戚と大事に皆で育てている。
そういう歴史がある、社会があるっていうことは私も行くまで知らなかったし、ほとんどの日本人が知らない。
それに比べて今の日本はどうでしょうか。ミクロネシアに学ぶところはあるし、反省するところもある。
それぞれの国で問題もあるし、良さもある。いろんな違った文化を見ておくと日本のことがよく見える。

まとめると、若い人たちへの言葉としては違った文化を知って、自分の人生、日本という社会をもっと“豊か”にしてほしいなと思います。」

杉「“豊か”になるためには違いを知らないといけない。」 

「良いハーモニーを奏でるには違った音、パートを知らないといけない。」

杉「本当です。その通りです。僕が言いたかったことを完璧に。さすが。そうなんです。」

違っているからいい。それぞれの“本音”を活かし豊かなハーモニーを。

杉「違う音があればあるほどいい。日本の学生のアカペラグループにしばしば見受けられるのは声質を均一に合わせようとしているときがある。“お互いの声が違うのはよくない”、だから“似たような声を出して全体的に整えよう”という考え方でそうしているんでしょうけど。
僕が思うのは本来自分が持っている一番尖った声…いろんなでこぼこがあるじゃないですか、声に。自分の中でそれを削って整えるのではなくて、削らずに、一番本当の声を出す。それは“本音”っていうことだと思うんですよ。本当の音をそれぞれが出して、尖ったところと尖ったところがぶつかるかもしれないけどお互いが補完し合う。誰かが持っているもので誰かが足りないものがあったらそこで補完し合うと豊かなハーモニーになる。
最初から整えて綺麗な箱に入った商品のようなハーモニーではなくて多少凸凹したり…hamo-laboのロゴのようにたまにはぶつかってもいいかもしれない。大事なのはそれぞれが持っている本当の豊かな音を出すべきだなぁと。」

ゆ「皆さんの良いところを活かしながらね。」

堀「インスピの6人って皆さん声が違いますよね?」

杉「全然違います。」

堀「透き通ってて綺麗な声や、パンチのあって味のある声や…」

杉「ちょっとアカペラグループとしては珍しいくらい声質がバラバラ。」

堀「ですよね。同じ声質でいいんだったら世の中ボーカロイドだけで済むのかっていうことですよね。」

杉「あはは!
INSPiメンバーは性格や主張も違っていていつも合わないんですよ。それぞれの考え方もみんなバラバラで。デビューして今年19年目ですが、グループ活動しながらずっと悩んで。なんでこんなにバラバラなんだろうってずっと苦しんでいたように思うんです。
けれども今19年経って思うのは、これだけバラバラだったからこそ続けられているのかなって。これがもし似たような思考だったら途中で何か大きな壁にぶつかったときにひょっとしたら皆で諦めてしまっていたかも。これまで本当にいろんな壁があったけど、諦めている奴がいれば全然諦めていない奴もいて、みたいな状態だったと思うんですよ。そういう意味でバラバラだったからこそ続けられているのかなって。」

堀「面白いですね~。」

ゆ「INSPiの皆さんのハーモニーは本当に素晴らしいです。感動します。これからもお身体に気をつけて、ますます頑張ってください。いつもいつも主人と応援しています。」

杉「ありがとうございます。このこともそうなんですが、ハモりを通した経験からたくさんの学びがありました。それを社会の中で不調和に苦しんでいる人に届けたいと思っているんです。」

堀「外務省を引退したらhamo-laboの顧問になろうかなぁ(笑)」

鼎談会話中

編集後記

堀江ご夫妻と僕らINSPiの出会いは本当に偶然で、大使館スタッフの方がINSPiのホームページを見てご連絡をくださったのが始まりです。日本でのINSPiのライブにお越しくださったりケニアからサファリの写真を送ってくださったりとお付き合いは続いています。
とにかくお二人のハーモニーがとっても素敵で、それは息がぴったりのお二人のお話ぶりにも表れているなと思いました。
“ハーモニーで人と人を繋ぐ”をまさに実践されている堀江ご夫妻。
お二人の姿を見て、ハーモニーの可能性をますます感じているところです。
堀江大使ご夫妻、ご多用のところこのような機会を持ってくださりありがとうございました。

取材場所:TOKYO L.O.C.A.L BASE