せいよ復興まちびらきコンサート

2018年7月の西日本豪雨災害から3年。

2021年7月4日(日)愛媛県西予市野村町の乙亥会館にて、「せいよ復興まちびらきコンサート」が開催され、アカペラグループINSPiとして出演してきました。

町のシンボルでもある乙亥会館(おといかいかん)も豪雨による被害を受けましたが、復旧工事が完了し、2020年に再オープンしました。同年7月に復興コンサートが開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大のため延期になっていました。そしてこの度、感染拡大防止のかたちをとりつつですが、開催できる運びとなり、やっとINSPi全員で野村に歌いに行くことができました。

コンサートの際、あるご家族からお話を伺いました。
災害により避難所生活、そして仮説住宅での暮らしが続いていたのが、ようやく最近新居に移れたと。この3年、何度もお会いしてきたのですが、今回ご夫婦の表情が明るく輝いていたのが印象的で。
最初、避難所生活が始まった時は、小学生のお子さんが「ここにおるといろんな人と話せて楽しい」と言って、お父さんは励まされたそうです。それでも仮設での暮らしが始まると、歌が大好きなお子さんもあまり歌わなくなり。そんな中「のむらのうた」をつくってからは家でも歌うことが徐々に増えていったと。
3年近くの仮住まい、本当に苦労が多かったと思います。それでもご家族、父も母も子も、互いに気遣い支え合い、ついに新しい生活のスタート。ご家族の寄り添う姿が、本当に幸せな雰囲気で、そこには乗り越えた人たちの強さも感じました。みなさんの表情、「いいかお」されていました。
「いいかお」とは命、一生懸命、感謝、思いやりの頭文字をとったもので、「のむらのうた」の時の小学校長先生の言葉。それを胸に刻んでいた子どもが「のむらからの手紙」で歌詞にしてくれました。
相撲や田植えや、祭りや、イベントごとに、協力しあいながら、大人が子どもに地域愛を伝えているのが野村。先程のご家族も、地域のみなさんがきっといつも気遣い、いろんな場面で支えようとされていたんじゃないかな。何気ないみなさんの冗談を言い合ったりする中でのささやかな気持ちの表れを感じ、僕は想像します。

地域愛が、災害の時には一番強いと感じます。地域愛を育てるのは、地域の文化を守り受け継ぐこと。
今年うたづくり第三弾として大人たちとつくった歌「野村人煦(じんく)」では“相撲と酒”という野村の代表的な文化をテーマにしました。今年170回を迎える野村最大の祭り「乙亥大相撲」。大人の真剣で熱い気持ちが感じられます。そして子は大人を見て育ちます。土俵で体をぶつけ合って育ちます。元は1852年の大火から、災害が起こらないよう愛宕山の神様に奉納した相撲。それからも戦難や豪雨災害、コロナ禍でも途切れることなく続いた乙亥大相撲。乗り越えるパワーの源です。
そんな文化を酒を交わすことで皆で仲良く楽しく守っている地域、野村。
毎年各地で様々な災害が起こります。人々は悲しみと苦しみに襲われます。それでもきっと人々は支え合い、立ち直って、また暮らしていくはずです。愛媛県西予市野村のみなさんとこの3年間で歌を通して交流させていただいた僕は信じられます。人と人、人と地域、その調和が命を明るく繋いでいくことを。

杉田 篤史


これまでにつくった野村の歌たち

▼子供たちとつくった「のむらのうた」(2018)と、リモートでつくった「のむらからの手紙」(2020)について

https://hamo-labo.co.jp/nomuranouta-project/

▼大人たちも負けていられない!相撲と酒、野村愛を歌った「野村じんく」

https://hamo-labo.co.jp/2021/05/16/nomurajinku/